植物に含まれる栄養素は、育て方次第でコントロール可能ってことが知られています。
例えば、
- 糖度を高めたメロン
- 腎臓病患者のためにカリウムを減らしたレタス
など、このような野菜や、そうするための技術が世の中にはすでに存在しているわけです。
しかし、このような手法を使うと、野菜が小さくなったり、不必要な成分が増えたりすることも…。
そこで、今回ご紹介する実験では、
できるだけマイナスな影響を受けずに、プラスの効果を得られない?
と、いったことを、レタスで検証しております。
手に入りやすく、口にする機会も多いレタスの栄養素が強化可能となると嬉しい限りですな。
今回参考にした文献はこちら
収穫前だけ、養液から水に変更して分析

使用したレタスの品種は「Maravilla De Verano Canasta」。半結球な赤いレタスですな。
播種から29日目に収穫して、各種パラメーターを計測しています。
で、実験で検証されたのは、収穫前だけ「養液環境を変える」ことで、レタスにどんな影響があるか。ってところ。
比較する養液条件は以下の3パターン。
- 収穫までずっと養液
- 収穫3日前に、養液から水に変える
- 収穫6日前に、養液から水に変える
養液を水に変更したことで、影響を受けるパラメーター

実験では、多くのパラメータが調査されていますが、気になったものだけ抜粋しております。
水処理の期間が長くなるほど、どう変化したかを記載してます。
重量や形態に関するパラメーター
新鮮重量
- 水処理3日で4.8%減少
- 水処理6日で13.2%減少
養液から水になると重量が増えないということでしょうかねー。でも3日の4.8%減くらいだと許容範囲内かも。
葉面積
- 減少。
乾物重量、葉数
- 有意差なし
新鮮重量に対して、こちらは意外と変わらないんですね。
葉の明度、彩度、緑、黄
- 減少。
全体的に色が薄くなる感じのようです。
光合成効率、葉緑素とかに関わるパラメーター
葉の色素含量(クロロフィルやカロテノイド)
- 有意差なし。
ちなみに外観の緑が薄くなったのは、クロロフィルではなくアントシアニン増加の影響みたいです。
SPAD指数、クロロフィル蛍光(Fv/Fm)
- 減少。
植物が、浴びた光を上手くエネルギーに変換できていない。的な状態ってことでしょうねー。
過酸化水素含量
- 6日で84%増加。
含有成分
ミネラル
- 窒素、リン、カリウムは減少
- イオウは有意差なし
他の成分はデータなし。
硝酸塩
- 3日で12.4%減少
- 6日で53.3%減少
アントシアニン
- 増加
有機酸
- 減少する傾向だが、シュウ酸は水処理3日が最も少ない。
炭水化物
- 増加。
タンパク質、アミノ酸
- 概ね減少。
ただし、主要なアミノ酸が減少する一方で、GABA、アルギニン、BCAAなどは増加しております。

養液から水への変更は、影響を受けるパラメーターが多い

というわけで結論です。
収穫前に養液から水へ変更することで、
- プラス面もマイナス面も、色々な影響が出る
- 水処理の日数が長くなるほど影響は大きいようです。
収量としては減少してしまうわけですが、GABAとかBCAAといった市場で注目されている成分が増加するってのは興味深いですな。
しかし養液を水に切り替えると言っても、実際にはなかなか難しそうです。
大規模に栽培している場合だと、大量の水が必要なのと、その分の貯水設備も必要になるのかなー。
栽培タンクをいくつかに分割して、タンク間で養液や水を相互に入れ替えられるようにする。なんて方法が現実的でしょうかね。
ヤサマガでは、水耕栽培に関する知識や技術を発信しております。他の記事もぜひ参考にどうぞ。
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