今回のテーマは、循環式の水耕栽培システムに欠かせない「ポンプ」。そして、病原菌を防ぐための「養液殺菌」です。
そもそも水耕栽培には、循環式と非循環式がありまして、近年は循環式の方がエコでいいよね。とされています。
そうなると欠かせないのが循環用ポンプというわけです。
で、ポンプの使用で疑問となるのが、
ポンプを動かすと養液に何か影響は出ないの?
ってところ。
そこで、ポンプが養液に与える影響を調べたのが、今回紹介する実験になります。
さらには養液殺菌装置を使った場合、養液に起こる変化についても調査しております。
今回参考にした文献はこちら
3種類のポンプを検証
実験で使われたポンプは以下の3種類です。
マグネットポンプ

自吸式ポンプ

水中ポンプ

ポンプの特徴をザックリまとめると以下のような感じです。
マグネットポンプ
- 磁気の力でインペラを動かす仕組みで、モーター部分と水が分離しているタイプ
自吸式ポンプ
- 吸い込みホース内を真空にすることで、水を吸い込むタイプ
水中ポンプ
- ポンプ自体を水中に設置するタイプ
ポンプを作動させて、養液や栽培への影響を調査する

それではどんな実験だったか見ていきましょー。
研究チームでは、もともとイチゴを栽培していたのですが、原因不明の生育不良が起こっていたそう。
そこで原因追求のため、ポンプや紫外線殺菌装置が養液に与える影響を検証してみたとのこと。
実験は2つ行われています。
実験1:ポンプの循環テスト(栽培は無し)
養液処方
- 園試イチゴ処方
テストされた設備
- マグネットポンプ
- 自吸式ポンプ
- 水中ポンプ
- 紫外線殺菌装置
検証された影響
- 養液成分の変化
実験2:レタスを栽培してみる
養液処方
- 山崎処方
テストされた設備
- マグネットポンプ
- 自吸式ポンプ
- 水中ポンプ
検証された影響
- 養液成分の変化
- レタス収穫後の栽培データ
養液成分やレタス収穫後のデータを分析

それでは結果です。
検証された項目ごとに確認していきましょう。
紫外線によって鉄イオンの濃度が変化する
- 3種類のポンプは影響は無し
- 紫外線殺菌装置では照射後に沈殿が発生し、鉄イオン濃度に大きな影響があった
養液が紫外線を浴びると鉄が沈殿する現象は、先行研究でもよく知られています。
研究チームでも、以下のようにまとめています。
紫外線を照射された養液は、酸化物(ヒドロキシルラジカルなど)を生成し、キレート化したFeを不安定化、分解し、養液中にFe3+イオンを放出する。
Fe3+は、養液中の他の化合物 [例えば、酸素(O2)、水酸化物(OH-)、重炭酸塩(HCO3-)、リン酸塩(PO43-)、SO42-]と結合して、Fe2O3として沈殿する。
この実験結果を受けて、研究チームでは、
紫外線殺菌装置は養液に鉄イオンを添加する前に作動させるべき。
と、最終的にまとめています。が、循環式のシステムだとなかなか難しい気がしますねぇ…。
ちなみに使用したUV-C強度は30W・m-2であったとのこと。
鉄以外の成分には影響がない
- 3種類のポンプ、紫外線殺菌のいずれも特に影響なし。
レタスの生育に直接的な影響はないが、水温に影響がある
- 自吸式ポンプの栽培結果が悪かった
- 磁気駆動ポンプと水中ポンプの出来は同じくらいで、どちらも良好
自吸式ポンプの栽培結果が悪かったのは、養液温度が15.5度上昇したからとのこと。(他2つは2.9度と3.7度)
水温が高すぎて生育に影響が出てしまったんですな。
しかしまぁポンプ自体が栽培を悪くすることは無さそうな感じですね。水温には注意ですが。


ポンプによって養液に影響はないが、注意点もあり

結論としては、
- どのポンプを使っても養液には影響ないが、水温には注意
- 紫外線殺菌装置は鉄に影響する
ただし、研究チームの方だと、
自吸式ポンプは水耕栽培システムには適さず、他はどちらのポンプも使用可能。
コストを考慮すると安価な水中ポンプがより好ましい。
と締めくくっております。
ただし自吸式ポンプであっても、十分な水量があれば過度な温度上昇は抑えられるはずです。
そのためヤサマガ的には、ポンプの選定は「設備規模も踏まえて」安価なものを。と、付け加えておきます。

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