作物を元気に育てる要素は色々とありますが、「風」もその一つ。
例えば、レタスなどで発生するチップバーンは、垂直方向からの気流によって改善されることが知られています。
チップバーン対策については、ヤサマガでも過去の記事で触れています。
ただ問題となるのは、
どういう設備なら、ピンポイントに当たる効果的な気流を生み出せるのか?
ってところ。
あまり大掛かりな設備はコストが高くなりすぎるし、けっこう難しい部分なんですよねー。
一応、植物上方から風を送り込む機構ってのも考えられてまして、生育に対しての実験もされておりましたので紹介します。
今回参考にした文献はこちら
実験で検証された送風モジュール3種

で、考えられた機構なのですが、3種類あります。
それぞれの機構で、刺激時間や風速によるトマトの生育への影響まで検証してくれてます。
空気圧モジュール

- 40cm間隔で取り付けられたノズルから空気を送り出す。
- ノズルには13個の空気穴が空いていて、ノズルは水平から垂直方向まで調整できる。
- 隣り合うノズルの気流が干渉し、気流が偏ってしまうことがある。
エアナイフモジュール

- ガイドレール上を走行するファンシステムから、2本のアームを通して空気が供給される。
- 吹出口の開口幅は1~5mmの範囲で調整でき、気流の入射角を水平から垂直方向まで調整できる。
- 他のモジュールに比べて、距離による風速の減少が緩やか。
- 開口部に沿って風速が大きく変動する。開口幅が5mmだと吹出口から離れるほど風速が小さい。開口幅が1mmだと差が少ない。
360度回転モジュール

- ガイドレール上を走行するファンシステムから、2本のアームを通して空気が供給される。
- 吹出口は水平から20度の角度で調整されたチューブ。チューブはモーターによって360度回転する。
- 他のモジュールと比べて風速が高く、均一な空気を供給できる。
空気刺激で苗の高さに影響がある

それでは結果です。
トマトの苗に対して、それぞれの機構による影響は以下のような感じに。
空気圧モジュール
- 高さが36%減少
エアナイフモジュール
- 高さが26%減少
360度回転モジュール
- 高さが33%減少
多少の差はあれど、
どのモジュールも、苗の高さが30%ほど低くなる。
という結果に。
ちなみにこの実験では空気による刺激ですが、物理的な刺激でも苗の高さが30%前後低くなるってことがわかっています。
トマト苗の高さを決定する主な要因は刺激強度であり、最大風速と苗の高さには負の相関関係がありました。
つまり、風速が強いほど苗は低くなるようですな。
その一方で、空気刺激の頻度を多くしても高さへの影響は少ないとのこと。
研究チームでも、
今後は、1日の処理回数をどの程度まで減らしても、最大限の身長抑制効果を維持できるかを検討する必要がある。
と、申しております。
今回この文献を紹介したのは、個人的には気流を当てる機構自体が気になりました。
まぁやはり、コストはかかりそうな設備ですねぇ。
密植したレタスの中心部にもピンポイントで空気を送り込む機構、どこかに無いものでしょうか。
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