私たちが様々な色を識別できるのは光の波長によるもの。
植物にとって光は光合成で必要なものですが、光の波長によって生育に影響がある。ってことは多く研究されています。
で、今回紹介する研究では、
生育の途中で光の波長を変化させると、レッドリーフは綺麗に赤くできるのか?
ってことを調べております。
光の波長(光質)に対する植物の反応として、よく知られているところだと、
- 赤色光は、葉の伸長や光合成産物の蓄積に有効
- 青色光は、2次代謝産物の合成に有効
- 緑色光は、葉の奥深くまで浸透して光合成を促進する
- 遠赤色光は、植物に日陰だと誤認させ、茎が伸びるなどの日陰を回避する反応が起きる
という感じ。
ちなみに自然界の中だと、光の強さ、時間帯、周辺の遮蔽物、などによって植物が浴びる光質が変わるわけです。朝や夕方は赤い光とかですよね。
植物はそんな中で、「光質の変化に対して効率的に反応する」ということができるように進化してきたわけですな。。
実験で検証されているのは、「栽培中のある時点から」光質が変わるという条件です。まぁ「波長が変化」ってのは、自然界ではなかなか起こらないかも・・・。な状況なわけですが。
でもLEDなどの人工光だと可能なので、植物工場では使いみちがありそうな技術ですな。
今回参考にしたのは、ミシガン州立大学によるこちらの文献。
そもそも植物工場で赤系の野菜は育つのか

で、本題の解説に入る前に。
今回の実験ではレッドリーフを用いていて、葉の赤さについて検証しております。
実は植物工場だと、レッドリーフやサニーレタスに綺麗な赤色を付けるのは難しいです。
ちなみに野菜が赤くなるのは、ストレスに対する防御反応だとされていて、
植物工場のように最適化された環境だと、ストレスがかからず、赤くなりにくい
というわけ。
つまり、照明によって葉の発色がコントロールできると有効な使い方もできそう。というわけなので、今回の研究には価値がありそうです。
生育12日目で、光の波長を変える実験

それでは実験方法です。
実験では、レッドリーフのロウサイという品種を用いています。播種から25日で結果を検証するのですが、その途中で「光の波長を変える」という実験です。
どういう光を使ったか
まず、使った光質は以下の6パターンで、数字は光の強さ(PPFD)を表しています。
1色~3色のLEDを組み合わせているわけですね。
白 | 赤 | 青 | 緑 | 遠赤 | |
---|---|---|---|---|---|
① | 180 | ||||
② | 180 | ||||
③ | 160 | 20 | |||
④ | 100 | 20 | 60 | ||
⑤ | 100 | 20 | 60 | ||
⑥ | 180 |
0~11日目に、6パターンの光質を照射して栽培。
12日目に光をチェンジ。
12~25日目には、さらに6パターンに分岐して生育させた結果を分析しています。
つまり、6×6の36パターンで検証したわけですな。(うち6パターンは変化なし。白→白とかね。)
ちなみに研究の目的としては、
(1)苗段階での光質が、異なる光質で栽培された成熟段階のレタスに与える影響を調べる
(2)単一の波長、2つまたは3つの波長の組み合わせ、および白色光の下でのレタスの成長を比較する
(3)望ましいレタスの成長と形態のための光質・生育期間の組み合わせを見つける
であると研究チームは申しております。
光質が変化すると、植物の反応も変化する

それでは実験結果です。
11日目と25日目に、以下のような項目が検証されてます。
- 新鮮重量
- 乾燥重量
- 葉の明るさ
- 葉の色合い
光質によって植物にどう影響するか
まず、光質によってどんな影響があったか。ですが、従来から知られているものと概ね同じです。
白色光と比べてどう違うか。ってことで整理すると以下のような感じ。
赤
- 白色と似た傾向だが、重量がやや増加
緑
- 葉の赤色が低下、黄色が増加
- 初期の生育への影響は少ないが、後期では生育が低下
- 遠赤ほどではないものの、似たような影響を及ぼす
遠赤
- 乾燥重量は影響少ないが、新鮮重量は増加
- 葉が長くなる
- 葉が明るくなる
- 葉の赤色が低下、黄色が増加
青
- 乾燥重量と新鮮重量が低下
- 葉が暗くなる
- 葉の赤色が増加、黄色が低下
光質による影響の傾向としてはこんな感じ。
生育途中で光質を切り替えた場合でも、この傾向は同様でした。
結論:LEDの光でレッドリーフを赤くする方法

まず、光質の影響は、生育初期と後期で差がありました。
最終的な収量への影響は初期から見られるものの、後期の影響の方が大きいという結果に。
苗段階での生育の重要性を指す言葉に「苗半作」ってのがありますが、後半も大事ってことですな。
そして、葉の色合いについては初期の影響は無く、後期によって左右されたと。
赤くしたいからと、初期から光ストレスや青色光を当てても、収穫時には意味が無いわけですな。
というわけで、結論として「収量があって赤い」レッドリーフを栽培するためには、
- 生育中:白、赤の光でドンドン大きくさせる。
- 収穫前:青の光でアントシアニンを蓄積させ、赤くする(遠赤、緑は当てない!)
という感じです。
まぁもちろん、葉が赤くなるかどうかが光の影響だけで決まるわけではないですが、それぞれの光の波長には上記のような影響があるというわけでした。
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