元気な作物に育ってほしいと思うとき、私達は作物ができるだけ成長しやすい環境に整えてあげるわけです。
環境を整えるアプローチには色々あって、温度、湿度、光、肥料などをコントロールするのはよく知られています。
でもさらなるポイントが。
植物の体内では周期的なリズムが刻まれていて、その体内リズムをコントロールすることでも効果がありそう。というもの。
そこで今回ご紹介する実験では、
- 体内リズムをコントロールすることで、植物にはどんな影響があるの?
ってところを調べてくれています。
今回参考にした文献はこちら。
そもそも体内リズム(概日時計)とはどんなものか

植物の細胞一つ一つには、約24時間のリズムを生み出すシステムが備わっていて、概日時計といいます。
この体内リズムは、例えば昼夜のサイクルを意図的に変化させたりするとズレることも。
で、リズムがズレた状態だと色々な生理機能に影響を及ぼすようです。
人でいうところの時差ボケと一緒ですな。
ただし、ズレたリズムに対しては環境に合わせてリズムを修正する機能も備わっています。
時差ボケをしても、しばらくすると体が慣れてきて通常の生活ができるのと一緒なわけです。
体内リズムのコントロールで実現可能なこと

で、気になるのが、意図的に体内リズムをコントロールしてあげると、どんな影響があるか。ってところ。
ちなみに体内リズムのコントロールってのは、LEDとかを使って光に当たる時間を長くしたりとかですよー。
体内リズムは植物体内の生理機能に良くも悪くも影響が大きいため、コントロール出来れば色々なことが出来そうです。が、まだまだわかっていないことも多いようです。
技術的にどういったことが可能になるのか、ポイントを整理しておきます。
- 病虫害抑制
- 収穫後の影響
- 生育速度の安定化
- 特定の成分量をコントロールする
病虫害抑制
アブラナ科に多く含まれるグルコシノレートという成分があるのですが、虫害を抑える効果があります。
キャベツやニンジンで確認されたのは、成分の濃度がリズムを刻み、害虫の活動時間に合わせて濃度を最大化させるというもの。
植物も効率的に己の身を守っているってことでしょうねー。
収穫後の影響
ブロッコリーでは、収穫後に進む黄化と関連しているそう。
体内リズムに関わる遺伝子に変異があると、黄化が抑制されるってことがわかっているそう。
生育速度の安定化
見かけが同じような苗でも、体内リズムは乱れているケースがあります。生育速度は24時間周期の決まった時間帯にピークとなるのが正常です。
が、体内リズムが乱れていると生育速度がピークになるタイミングがバラバラになり、生育が安定しません。
不自然に昼夜のサイクルを乱してしまうと悪影響が出てしまうことになります。
特定の成分量をコントロールする
植物体内の特定の成分量をコントロールできれば、植物の高付加価値化に繋がります。
体内リズムは植物体内の生理機能への影響が大きいため、コントロールによって二次代謝物の生成量が増減します。
リーフレタスの遺伝子を機能解析したところ、光合成関連、硝酸代謝、ビタミンB1代謝に体内リズムの影響が強いとのことです。
植物の体内時計をコントロールするには光を当ててあげる
植物の体内時計をコントロールすると、変化が色々ありそうですよ。ってところを解説してきました。
で、体内時計のコントロールってどうやるの?って話が重要ですな。
光を遮って当たらないようにしたり、逆に以下のようなLEDを使って光を当ててあげるわけです。

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