野菜を収穫したあと、「すぐ冷蔵庫で保存」ってのは長持ちさせるための手段です。
でもこれ、必ずしもそうじゃないかも・・・。
という感じのことが、いくつかの実験で報告されています。
例えば、収穫した果実を40℃で24時間保管してみると、
- クロロフィルの生成が減少し、追熟が抑制
- 果実の軟化が抑制
- 病虫害を防ぐ
- 糖度の減少を抑制
- 低温障害が抑制
- 栄養的・機能的な特性が改善
と、いったような効果があるようです。
どれも高温ストレスに対する反応のようですが、「どんな感じで熱ストレスを与えると良いか」ってのは、よくわかっていないわけであります。
というわけで、
- 野菜の保存中に「温めたり」、「冷やしたり」すると、どんな影響があるの?
ってことを調べた実験がありましたのでご紹介します。
こちら、実際にやってみると、「すぐ低温で保存」だけが正解とも言い切れないって感じの結果になってます。
今回参考にした文献はこちら。
保存中に水分量の変化を検証した実験

それでは実験方法です
実験では、まずトマトとミカンの保存中に重さを測れるようにしておきます。
重さを測る目的としては、
時間ごとに環境を変化させて、水分の損失量を測定するため。
という感じ。
ちなみに水分の損失量は、時間ごとの重量変化から求めることができます。
さらにミカンでは湿度を変化させて、カビの発生がどうなるか。ってことも調べております。
ストレスを与えると、耐性がパワーアップするようだ

野菜や果物の保存方法は、一般的に「収穫後すぐに一定の低温で保存するべき」とされています。
ちなみに「低温」にする目的はこんな感じ。
- 呼吸などの生理機能を抑える。
- 細菌の増殖を抑える。
以上の効果により、新鮮な時間を延ばすことが低温保存の目的なわけです。
ただ、保存環境をコントロールして野菜の反応を検証してみると、「低温保存」するよりも効果的になるケースがありそう。ってことがわかってきました。
トマトの場合
- 40℃ほどで1日間保存、その後に低温で保存すると水損失速度が抑えられた。
- ただし、熱ストレスを与えている期間は水損失速度が急上昇する。
というわけで、いったん高温にした後に低温にすると、水損失を防げるという結果に。
状況次第では、熱ストレスは保存に効果的。ってことが言えるとは思いますが、問題なのは高温期間は水損失が急上昇しちゃうところ。
通常の保存方法と比較して、熱を与える方法が有利だと言えるのは180時間以降になります。
ミカンの場合
ミカンでは保存中の湿度について検証されていて、結果は以下のような感じ。
- 最初の9日間は低湿度(40%)、その後高湿度(85%)に変化させると水損失が抑えられた。
一般的に、水損失を防ぐには高湿度が良いとされてるわけですが、トマトと同様にそうではないケースもありそう。という結果に。
こちらもストレスを与えることで、保存状態の変化が確認できたってことですな。
ストレスへの耐性がパワーアップ
トマトとミカンの実験が行われたわけですが、共通点がありました。
何かというと、
- 保存の初期にストレスを与えることで、環境に対する耐性が生まれた
ということになります。
植物に一度ストレスを与えると、そのストレスに対処しようとします。そのあとで通常の環境へ戻すと、耐性がパワーアップするようですな。
収穫後に味を良くする。とかが出来るかも

植物はストレスに対処するために、自らの生理機能をパワーアップできるみたいです。
- 栄養価を増やす
- 味を良くする
みたいなことも出来そうなんですよねー。
「狙った生理機能をコントロールするために、保存方法を変える」
みたいなことができると、収穫後に品質をコントロールする。なんてことも可能になるかも。
葉モノ野菜のような、足が早い野菜だとどうなるんでしょう。
気になります。
まぁでも基本は冷やして生理機能を落とすことですので、こういった方法が使えそうなのはかなり特殊な状況ですな。

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