人工光のLEDなどを用いて栽培をした場合、照明の電力コストが大きくなりがち。
コスト削減のため、シンプルに照射時間を減らしてしまうと、その分植物は成長しないわけで・・・。
生産効率化のためには、「電力コスト」と「収量」、両方の側面から考える必要があるんですよねー。
そうすると課題となるのが、
電力コストを抑えつつ、収量を増加させるにはどうしたら良いの?
ってところ。
今回は、そのへんの検証をした実験を紹介します。
実験の狙いとしては、エネルギー効率の向上にチャレンジしているわけですな。
今回参考にした文献はこちら
エネルギー効率を高めることができる仮説

それではどんな実験だったかを見ていきましょー。
まず実験の前段階として、研究チームでは以下の仮説を立てております。
1日あたりの光量が同じであれば、「光周期を長く」かつ、「光を弱く」した方が光合成を効率的に行えるのではないか?
で、実験で仮説が正しいことを検証しようとしたわけです。
同じ光量だけど、「光を浴びる時間」と「強さ」をコントロールする実験
実験ではリトルジェムというレタスが使用され、発芽から1週間後に実験スタート。
まずは、レタスが浴びる1日の光量(DLI)を、17 (mol-m-2-d-1)に設定されました。
ちなみにDLIってのは、
植物が光合成で利用できる光が、1平方メートルの面積に当たる光量(1日あたり)
のことです。
で、実験では光当ての時間を決めていて、
- 12時間
- 15時間
- 18時間
- 21時間
上記、4パターンの時間となっています。
それぞれの時間に合わせて光の強さを調整して、DLIが全て17以上となるように合わせているわけです。
つまり、時間が短いと強光だし、時間が長いと弱光、でも浴びる光量はどれも同じってことですな。
光合成効率を高めるには、「光周期を長く」かつ、「光を弱く」

で、わかったことを整理しています。
以下は12時間を基準として21時間を比べたもので、先頭の()は増加率となってます。
- (27.6%UP)乾燥重量の増加
- (92.0%UP)消費エネルギーあたりの乾燥重量が増加
- (12.3%UP)葉の大きさが増加
- (18.1%UP)クロロフィル含有量が増加
- (46.6%UP)チップバーンの数が増加
どれも、「収量」や「光合成効率」の増加を示す結果となってます。
光当てが12時間でも21時間でも、DLIが17で固定ということは、どちらも使うエネルギーは同じ。
つまり、同じエネルギー量でも時間と強さの調節によって、光合成効率に差がつくということです。
ただし、乾燥重量が増加したことで、チップバーンもつられて増加しちゃってます。
というわけで、
- 1日あたりの光量が同じであれば、「光周期を長く」かつ、「光を弱く」した方が光合成を効率的に行える。
という仮説については実証された。
と言えますな。
研究チームの方でも、
補助光での規定照射時間を延長し、LED照明の調光性を利用した適応的な照明制御手法を用いることで、補助光の照射に費やす電気エネルギー1ジュールあたりのバイオマスの生産量が増加する。
と、結論づけております。
ということは、光周期を24時間にすると最大効率になるのか。ってのが気になっちゃいました。
光周期を長くすると、さらに照射する光を弱くできるはず。
問題となるのは、光が弱すぎると徒長のような障害も出てくることでしょうか。
24時間の光当てでも問題なく生育するような強さで光を調整できると、エネルギー効率としては高まるのでしょうかねー。
弱い光を常に当て続けるという…。植物にとってはブラックな栽培環境ですな。

ヤサマガでは、水耕栽培に関する知識や技術を発信しております。他の記事もぜひ参考にどうぞ。
コメント